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短編小説「他人の墓参り」

夏のある日の物語。

 

男は苦労を重ね社会的にある程度の地位を手に入れた。

 

恋人とも入籍が決まり幸せの絶頂だった。

 

今日も決まって仕事に行く。

 

やりがいのある仕事だ。

 

俺にしか出来ない。

 

先日、地震が起きた。

 

何の罪もない女の子が亡くなったらしい。

 

そのニュースを聞いて男は死ぬのが怖くなった。

 

風呂に水を溜め、本棚やテレビから離れて布団を敷いた。

 

朝、よく晴れていた。

 

恋人は眠っていた。

 

今日は朝飯当番だろうが。

 

だらしない女だが美人だし金持ちだ。

 

朝飯は抜くか。

 

顔を洗って歯を磨いて髭を剃って家を出る。

 

毎日仕事に行くために家から歩いて1分ほどのバス停に向かう。

 

15分の余裕を持って家を出た。

 

バス停にはいつもいる野球部の高校生はいない。

 

やれやれ、遅刻でもしたのだろうか。

 

綺麗な蝶々が飛んでいた。

 

橙の羽を目線で追う。

 

男はふと200m先に墓地があるのを見つけた。

 

あれ?こんなところ前まであったっけ?

 

男は蝶々を追うようにして墓地へ足を踏み入れた。

 

ひたすら歩いた。

 

その一つ一つに残された人の思いがあり立ち並ぶ墓石はとても美しく尊いものに思えた。

 


他人の墓参り

 

男はふらふらと歩いた。

 

死とはなんだ?

 

眠りなのか?無なのか?

 

歩いているうちに男は正解に辿り着いた。

 

ふと気がつくと10分以上経過していた。

 

戻らねば。

 

後ろを振り返ると遠くでバスのドアが閉まる音がした。

 

バスが行ってしまった。

 

なんて日だ。

 

俺に面倒をかけるな、神様仏様。

 

いや全て自分のせいだ。

 

くだらない暇つぶしをした罰だ。

 

いいや、駅まで歩くか。

 

口笛を吹きながら男は未来に希望だけを信じて足取り軽やかに歩き始めた。

 

男は途中で熱中症で倒れて死んだ。

 

 

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